初めてラーメン二郎に行った日

初めてラーメン二郎に行った日

食べ物にはあまりこだわりがなく、昔は何においてもコストパフォーマンスが最優先だった。

お菓子を買う時は必ず内容量を見ていたし、菓子パンを買う時だって見た目が大きいと言う理由で、山崎製パンの「スイートブール」ばかり手に取っていた。

つまりは単なる金欠で、そんな金欠症状が抜けないまま大人になってしまったため、味の違いなどにはさして興味がないのだ。

 

ジローっていったい誰なの?

学生時代、ある時から街中やメディアの片隅、友人たちの会話の節々に「ジロー」という名前を聞くようになった。

具体的なことは分からないけれど、とにかくデカくて濃くてヤバいらしく「いったいどんな人なんだろう?」と思いながらも、いつも眠かった僕は聞き流すばかりで、核心に迫ることができないでいた。

そんなある日、友人に唐突に「ジロー食いに行こうよ」と誘われる。いやそんな当然知っているみたいに言われても……と思いながらも、屁のような返事でうなづいてしまった僕は “ジローとは食べられる何かである” という情報を元にネットで調べてみることにした。

検索するとすぐにその正体が分かった。人名と思っていたものはラーメン店の名称であり、ボリュームと味の濃さを売りにした、近頃流行りの(?)スタイルで話題になっているらしい。

写真で見る限り、どんぶりの上にはあふれんばかりの野菜・野菜・油・野菜……というか麺が全然見えなくて、これはラーメンと言う名を冠してはいるものの、まだ知らない新種の食物なのではないかとゴクリと唾を飲む。

まったく、砂糖とクリームを飽和寸前までどっぷりと押し詰めた、コーヒーとは名ばかりのなんとかフラペチーノとか、なんとかドーナツとか……健康に石を投げつけるような食べ物ばかりが流行ったりするんだから、外食が好きな人ってみんなMなの……? なんて勘違いしそうになる。

普段ならここで回れ右して、エックスビデオでも見るところを、近いうちに友人と行かなければならない僕は他人ごとにもできず、さらに調査を進める。するとさらに下記のようなことが分かった!

・メニューには小・大・豚増しなどがあり、小の時点で普通のラーメンの2倍くらいの量がある
・食後にはカウンター上にどんぶりを置いて、ふきんで汚れを掃除しなければならない
・ラーメンが出される直前に、ニンニクの有無を聞かれる
・お店によって味が違うらしく、ファンの間では独自のネットワークが築かれている
・ファンのことをジロリアンと呼ぶ

・毎日食べると1か月くらいで死ぬ!!!

調べれば調べるほど、普通の飲食店とは一線を画す独自のルールがあるらしく、ちょっと面倒そうだな……と思ってしまった。

常連さんが多そうだから、注文の時にもたついたら白い目で見られたりするのかな……。などと気が小さい僕は少々不安になりながらも、小のニンニク増しを頼むことを決意し、友人との予定日を確認するのであった。

 

初めて行ったお店は、ラーメン二郎 湘南藤沢店

当日、僕たちは “ラーメン二郎 湘南藤沢店(神奈川県)” に向かった。

 

余裕をもって到着し、開店直後に入ろうとしたが、お店の外にまで行列ができている。というか店内はカウンター席でいっぱいで、ほとんど並ぶスペースがないらしい。

外は暑いしお腹が空いているということもあり、待っている時間はなかなか辛かった。

20~30分くらいは並んだだろうか。入り口をくぐるとすぐ横に券売機があり、お金を入れて「小」を押すとプラスチックの食券らしきものが落ちてくる。手に取った僕はさらに5分ほど待ち、ようやくカウンター席に腰を下ろした。

友人と離れてしまったことに動揺しながらも店内をそれとなく見回す。壁には「心の乱れは ~中略~ 宇宙の乱れ。ニンニク入れますか?」という、よく意味の分からない訓示が張られ、聞こえるのは麺をすする音と、忙しそうに厨房を動く店員さんの足音ばかり……。

まるで何かの競技のような殺伐とした空気に気圧されながらも、店員さんの「食券見せてください」という声にすかさずプラスチック券を掲げることができたので、とりあえず第一関門は突破だ! とほっとする。

私語を交わす人はおろか、咳払いすらはばかられるような雰囲気に、ラーメン店でこんなに緊張したのは初めてかもしれないなぁ、などと考えていると不意に「ニンニク入れますか?」と声が飛んでくる。突然のことに頭が真っ白になった僕は「ニ、ニンニクと、あ、あとからめでっ!」と、舌も噛み噛みに答える。

手前のお客さんが「ニンニクからめ野菜増し」と流ちょうに言っていたのを耳にしたからだろう。意味も分からず同じことを口走ってしまった僕は「からめってなんだよ、激辛だったらどうしよ~!」と泣きそうになりながら、心の中で頭を抱えた。

 

ついにラーメンが来る! なんだこれは……

※写真は食べたラーメンとは関係ない素材です、ごめんなさいっ!

ドドン! という音を響かせ、カウンターにどんぶりが置かれる。顔を上げると、視界をおおい尽くすような野菜の山が! もちろんオーバーな物言いだけれど、どんぶりからあふれんばかりの(実際スープがちょっとこぼれている)ボリュームには写真で見た以上に驚いた。

覚悟を決めて箸を取った僕は、野菜(ほとんどもやし)を次々口に運んでいくが、いくら食べても麺が見えてこない。スープは醤油・アブラ・ニンニクを煮詰めたような濃さで、そのまま飲むとと舌がひりつくようだった。しかし、野菜と絡めるとちょうどいいことに気づいた僕は、れんげを使いながらもやしの山を崩していくことに。

麺が見えてきた頃には、さっきの空腹なんてどこへやら……すっかり腹8分目を迎えていた。「うどんみたいな、平べったい麺だなぁ~」と、なんでもない感想を抱きつつ、箸を動かしていく。

しかし、その動きも瞬く間に鈍ってくる。決しておいしくない訳ではないのだけれど、もうすっかり満腹なのだ。そして代り映えのない味に、すっかり飽きてしまった。

そう。最初に野菜をきれいさっぱり片付けてしまったのは、大きな間違いだったのだ! 誤りに気がついた僕は、覆水盆に返らずという現実を嘆きながらも、なんとか完食した。(スープは残したけど)

ラーメン二郎を後にした僕と友人は、近くの自販機でジュースを買った。胃袋を中和するように、オレンジのしぼり汁を流し込んでいく僕に、友人がたずねる。

[st-kaiwa2]どうだった?[/st-kaiwa2]

[st-kaiwa1]もう行きたくない。それと “からめ” って頼んじゃったんだけど、それってどういうこと?[/st-kaiwa1]

[st-kaiwa2]味濃いめってこと。[/st-kaiwa2]

それだけ言葉を交わすと、僕たちは解散しそれぞれ帰路に着いた。家までの道のりが、異様に長く感じたのを覚えている。

 

すっかりデカ盛りラーメンにハマってしまう!

そんな訳で、初めてのラーメン二郎はジタバタしたくなるほど甘酸っぱい思い出なのだけれど、それ以来ほかのラーメン二郎店や、湘南にあるインスパイア店などにも頻繁に通うようになった。

初日は吐き気をこらえながら帰った僕であるが、次の日になると「なんかまた行きたくなってきた!」と謎の心変わりをしていたのだ! のど元過ぎればなんとやら、理由はよく分からないけれど、これがファンをつかんで離さない秘密なのかもしれない。(通っているうちに、いつの間にか量にも慣れた)

最近は体のことを考えて、あまり行かなくはなってしまったけれど、それでも月に1度くらいはどうしても我慢できなくなる。

現在、最寄りのラーメン二郎店は自転車で40分ほどの距離にある。行きはヨイヨイ帰りはコワイって感じだけれど、それでも通ってしまうのは、そこでしか得ることができない何かがあるのかもっ!

それではまた!

 

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